COVID-19のメディア・エンターテインメント業界への功罪
メディア&エンターテイメント業界では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響を経験しても、なお業績を伸長させている企業は数多くあります。これらの企業は、コンテンツやソリューションの強みに加えて、直販モデルとして直接顧客とデジタルプラットフォームを通じて結び付いていることで特に強みを発揮しています。
メディア&エンターテイメント企業は、ポートフォリオの見直しを進める上でもこのデジタルプラットフォーム(コンテンツ流通、課金、顧客サービスなど)やそれを実現するためにどのようなデジタルテクノロジーを取り入れるか、どこにテクノロジーを取り入れ、いかに強固にしていくかが大きな論点となってくるでしょう。
潜在的な影響
コンテンツへの需要は増加しているが、制作体制および広告収入が課題
新型コロナウイルス感染症の影響により外出自粛やイベントの中止・制限やリモートワークの普及等をきっかけに、その後も、自宅でNetflixなどのビデオ・オン・デマンド(VOD)コンテンツやオンライン・ライブの利用が増加しました。これによって、テレビ番組、映画、ショート・ビデオ、音楽ストリーミング、オンラインゲームなど、あらゆる形態のメディアに対する需要が急増しました。
一方で、世界的なエネルギー価格の上昇と原材料費の高騰、人手不足は物価高騰の主な原因となり、個人消費や家計を圧迫し、消費マインドの低下による一部企業の業績悪化により広告収入は減少しており、テレビ業界や多くのオンラインプラットフォームが売上減を見込んでいます。
広告主は現在の状況を反映したコンテンツを制作し始めています。無神経な広告に対する消費者の目が厳しくなっているため、広告におけるメッセージの重要性はますます高まると考えられます。
DX戦略とM&A
DX戦略とは DX(デジタルトランスフォーメーション)「IT技術の導入により事業をより良く変革し、市場競争上の優位性を確立する」ということ。
M&Aが増加する可能性
差別化アセットを確保するため、DX戦略を実現していく為のM&Aに新たな光があたると考えられます。資本などアセットが潤沢な企業が革新的なスタートアップの買収に走る可能性もあります。
スタートアップは流動性、企業価値評価額の下落、資金調達難(ベンチャーキャピタルと一般投資家)といった課題に直面すると見られます。キャッシュフローを維持するために雇用凍結や人員削減に踏み切る可能性もあります。
経営陣が考えるべき問い
- オンライン需要が増加傾向の中で、顧客満足度をどのように維持していくか?
- 制作体制が予算・人員などの制限を受ける中で、新しく魅力的なコンテンツをどう制作するのか。効果的な制作体制を構築するためには、どのような技術が利用できるのか?
- デジタルチャネルを今までとは異なる方法でどう活用すれば、視聴者との繋がりを構築することができるか?
- 刻一刻と変化する時代に、コンテンツと広告をどう対応させればよいのか。コンテンツの資金調達に不可欠な広告主をどのように支援できるだろうか?
- 中期的な収益の減少を相殺するために、コスト構造をどのように見直すべきか?
- ビジネスのあらゆる面において効率化、自動化をどう最大限に活用できるか? (顧客、従業員など)
- プライバシー保護の基準はどう変化しているか。また、それは自社のコンプライアンス・ポリシーにどのように影響するか?